本研究室のスケーリーフット研究

 
 

私たちは、2009年11月に海洋研究開発機構の有人潜水調査船「しんかい6500」及び支援母船「よこすか」を用いて、かいれいフィールドの生物•地球化学的調査を行いました。


当時スケーリーフットは極めて希少な生物と考えられていましたが、私たちは数千匹のスケーリーフットが群がる大群集を発見しました。その結果、スケーリーフットの生理・生態や共生微生物との相互作用を解明するための様々な実験を行うことが出来ました。さらに一部の個体を持ち帰り、神奈川県の新江ノ島水族館で生きたまま一般展示しました(北大プレスリリース)。

 

共生微生物の全ゲノム解析

「この動物は鉄板で出来ていたってことです」

ジュール・ヴェルヌ著 「海底2万マイル」より

この台詞は、潜水艦ノーチラス号を発見し「怪物」だと思ったネッド・ランドによるものです。近年、まさにこの怪物のような生物群が世界各地の深海から発見されています。中央インド洋海嶺の「かいれいフィールド (Google Map)(水深2,420 m)」に生息するスケーリーフット(通称「黒スケ」)は、カタツムリと同じ巻貝(軟体動物腹足綱)の仲間ですが、食道に共生微生物を有し、腹足に鉄板ならぬ「硫化鉄の鱗」をまとうという、他の如何なる生物にも見られない特徴を有しています。

スケーリーフットがどのような生物か理解するためには、その共生微生物を研究することが欠かせません。なぜならスケーリーフットは、二酸化炭素から栄養分を作り出す特殊な共生微生物を体内に住まわせ、生息に必要なほぼ全ての栄養分をこの共生微生物からもらって生きているからです。


我々はスケーリーフットの命綱ともいえる共生微生物の完全なゲノム配列(2,597,759塩基対)を解読しました。本研究は巻貝の共生微生物の全ゲノム配列を決定した世界初の成果であり、スケーリーフットの生命維持に不可欠な代謝経路を数多く解明することに成功しました。


また、スケーリーフットの血液検査により、スケーリーフットは環境中のエネルギー源(硫化水素や水素)を敏感に感知し、速やかに体液成分を変化させることも分かりました。


さらに、スケーリーフットは世代毎に決まった共生微生物を、環境中に無数にいる微生物の中から厳選して獲得していることが分かりました(北大プレスリリース; 研究論文はこちら)。

動画Scaly-Foot_files/ScalyMovie_1.m4v

現在の研究

本研究室では、上記のスケーリーフットだけでなく、様々な深海(微)生物の進化や生理生態の解明、共生系進化の道筋、さらには他に類を見ない鱗形成能力の産業利用や共生機構の医療・創薬への応用につながる研究を進めています(アクセスはこちらの農学部総合館E508、ラボの見学等にご興味のある方はnsatoshi[at]kais.kyoto-u.ac.jpまで

協力:JAMSTEC

スケーリーフット大群集の発見